長年、製造メーカーの工場で経営をしてきました
近年、日本でのものづくり、特に大企業の生産が海外に移転し、日本にて製造・生産にかかわる技術者もしくは、製造の知識のある技術者不足が進んでいます
方やその分、海外の製造工場の製造技術者のレベルが上がっているかというと、日系企業に関しては、すごくバラツキがあるように思います
日本企業の海外含めたものづくりの競争力低下を危惧しています
その原因と対策を考えてみました
日本の工場の海外移転
製造企業の海外進出は90年年代から加速し、大企業の70%程度は海外向けの製品は現地で生産する体制をとっていいるようです
データは小川製作所さんのブログから拝借しております
私も、ご多分に漏れず、その流れに乗り長年、海外の工場で仕事をさせていただいております
日本企業が海外に工場を持ち、海外での生産を拡大することの是非の議論は、ひとまず置いておいて、製造現場が日本から少なくなることにより、その影響による製造技術者の問題を考えてみたいと思います
日本の大企業製造技術者の現状
冒頭の大企業の海外での生産が進む中、日本の工場は減少傾向です
特に大企業で顕著なようです
それに伴い、製造に関する技術者が減ってきております
日本での生産が最盛期に採用されたベテラン技術者はすでにベテランの域、また定年退職を迎えた方も多くいます
私が、若い設計者だったころ、ビシビシしごいてもらった人たちは、会社には残っていません
また、新規採用も工場現場が減るに従い採用が減っているという現状があります
さらに、これに追い打ちをかけているのが、大企業の設備および人に対する投資の抑制です
日本でのものづくりを継続するために、本来、自動化や効率的な生産のための生産技術の開発・投資をしなければならないのですが、今の日本の大企業は、投資を減らすことで利益を確保する道を選ぶ傾向があります
下の図は、一人当たりの生産設備金額ですが、1990年代をピークに全く増えていません
(この図も小川製作所さんのブログから拝借させていただいています)
さらに、人にも投資をしていないのは、採用の抑制、また平均給与が伸びていない現実からも明白です
このように、日本の製造に関する人材育成の環境は少なくとも大企業においては、どんどん劣化している現状があります
とはいえ
「生産拠点が海外なら、そこで製造技術に関する人材がいれば十分」
という考え方もあるかもしれません
現地人材の育成
海外拠点の場合、そのマネジメントは大きく2つのパターンがあると考えています
・徹底的に現地人材を教育して任す
・日本人出向者がマネジメントし、現地人材は作業のみを行う
中途半端がもっともNGです
部門によって分ける方法もあります
製造部門に関して言えば 「徹底的に現地人材を教育して任す」場合、
現地人に設備の仕様付け、発注、導入、さらに工程の設計を任せる
それが実行できるまで、しっかりと教育することが必要です
「日本人出向者がマネジメントし、現地人材は作業のみを行う」 場合
設備導入や、工程設計を日本が行い、現地はその指示に従って準備するだけ
メンテナンスの技術はしっかり習得
のパターンになるかと思います
海外工場の製造技術者
これは、私の見聞の範囲で私なりに考察した話になることご了解ください
ローカル人材の育成は会社によって、大きくバラツキがあり、現地人材をしっかり育成し、すでに日本からの指導・教育など必要ない会社もあります
また、日本で決めた生産技術・使用を導入できるように、日本側の体制をしっかりとっている会社や、現地に大量の日本人を送り込み生産活動を継続している会社もあります
しかし、
「現地人材を教育し、現地に任せれるようにする」方針でありながら全くできていない会社が多いことも現実です
そのため、昔の設備を何とかメンテナンスしながら生産を続けている会社が多くあります
また、経営者が現地人の育成のため日本から人を呼ぼうと思っても、赴任できるスキルを持った日本人は限られる状態です
なぜ、育成することを方針にしながら、育成ができていないのか
いろんな理由がありますが、私が考える大きな理由は
「スキルはあっても育成が得意な製造技術者が少ない」
と考えています
職人気質の人が多くて、また、語学能力の問題もあり、赴任してもしっかり教えることができない場合が多いようです
また、育成には時間がかかります
経験の少ないローカル人材が、新しい設備を入れようとすれば、その仕様決め、設備メーカーとの調整、導入、生産まで通常より2倍以上の時間がかかる場合も普通にあります
その時間を、
「 育成のために 待てる経営者が少ない」
ことも大きな原因と感じています
そして、現在、アジアの工場で見られる現象として、製造現場に沢山の日本人OB(定年退職後の人材や定年を延長して仕事を続けておられる方)製造技術者が残り、生産設備の導入やメンテナンスをしています
しかし、これは問題の先送りであり、結局その方たちが引退した時点で、人材不足に落ちる結果になります
対策案
海外工場での経営をしている立場での話になってしまいましたが、現状日本の製造エンジニアの不足により
・日本のものづくりの力が全体として低下している(特に大企業)
・海外でのレベルの高い製造技術者を育成できない
そして
・海外工場含めた日本企業のものづくりの競争力がドンドン低下する
という現象が起きている状況だと思います
この状況に対する対策として、一番いいのは
「本社経営トップが、人材を育成できる製造技術者を育成する方針を打ち出し実行する」
ということになるのですが、現実的にはそのような経営者の出現を待つのか、仮に出現してもその育成には時間がかかります
そこで、この対策として
「今なお元気な日本の中小企業にその役目を担ってもらう」
と、いう案はいかがでしょうか?
申し訳ありません。この考えは、前出の小川製作所さんの意見のパクリです
大企業と中小企業のコラボによる製造の競争力向上
いままで、日本の大企業の多くは中小企業を単なる「下請け企業」として対応してきました
下請けの中小企業を「大切なパートナー」と称しながらも
「注文書を出し、いかに安い見積もりを提出させ、自分たちの利益を稼ぐ」
ことを最優先にして、本当のパートナーとして 「三方よし」 の関係を気づけてきたのか甚だ疑問です
(個人的にはWin-WInより「三方よし」という近江商人の言葉の方が好きで使ってます)
この考え方によって、日本の多くの中小企業は疲弊し、日本人の給与は下がる一方、デフレが続き、日本の経済は長らく停滞する状況に陥っています
具体的には、大企業は中小企業のものづくりのプロたちを「製造をつかさどる戦略的パートナー」として、見積もりで値段を競わしたり、一時的な便利屋として使うのではなく
社内の「製造技術/生産技術」部門とし、製造にかかわる技術的なことをすべて任せてしまう(海外工場も含む)
設備の投資の企画、設計、導入、さらには海外会社の人材育成まで担ってもらう
実際に実行しようと思えば、いろんな問題も発生します
・製造という、ある種ブラックボックスになるべき機能を社外にゆだねていいのか?
・ただでさえ弱体化している社内の製造/生産技術が弱体化する
・そんな信頼できるパートナー見つけることできるんか?
こんな問題を主張する人たちがいることが目に浮かびます
しかし、すでに製造技術者が不足し、ものづくりが低下している大企業、そんな環境にしてしまった大企業が、今更
「なに心配してんねん」
っていう感じです
今や「オールジャパン」で戦わなければ勝てない競争環境です
すでに、このようなことをしなくても自社での製造/生産技術者の体制ができている会社は関係ない話ですが、できていない多くの会社にとって一考の値ありと思いますがいかがでしょう
ただ、そのためには
中小企業側も、自らの技術力を磨き、提供できる付加価値を高める努力が必要です
また、一つの中小企業では、大企業の要求をすべて満たすことができない可能性も高いです
そのためには、中小企業同士で、一つの連合体をつくることは必須と思います
そのような、中小企業の連合体を戦略的パートナーとして共に歩める体制、私はワクワクします
まとめ
日本の大企業の製造技術者の問題について考えてみました
まだまだものづくりのプロとして力のある中小企業と一緒になって問題を解決する方法として
社内の「製造技術/生産技術」部門とし、製造にかかわる技術的なことをすべて任せてしまう
という考えを提案してみました
かっての「ものづくり大国 日本」を取り戻すため、大企業と中小企業が一緒になり「オールジャパン」で競争力を上げていく取り組みいかがでしょうか
参考ブログです
コメント