製品の信頼性を確保する時、厄介なのは設計者が制御できない要因で品質に影響が出るときです
たとえば、製造バラツキ、経年劣化、使用環境等により補償すべき機能(性能)が劣化する場合です
このような制御できない要因(誤差因子と呼びます)の影響を受けにくい設計=ロバスト性の高い設計を意識しておくことは商品信頼性を高めるために重要なことです
制御できないない要因=誤差要因とは
シンプル製品として入力と出力がリニアに関係している製品を考えてみましょう
図で書くとこんな感じ
例でいえば、モーター
INPUTが「電圧V」 特性値が「出力W」としましょう
この特性は、ある環境、条件下で出るものであって、環境や条件が変わると特性が変わる場合があります
つまり、赤線のようにPINPUTと特性値の関係が変化した場合です
この変化が発生する要因はいろいろあります
環境(気温、湿度)、経年劣化、製品のバラツキなどですね
これらが厄介なのは設計者がコントロール(制御)できないことです
モータの電圧は設計者が設定することができます
また、ある決まった条件下では、モータの仕様を決めれば出力は設計者の意図で、ある程度コントロールできます
しかし環境(気温、湿度)、経年劣化、製品のバラツキなどは設計者がコントロールできないものです
にもかかわらず、製品の性能に影響を与えます
これらを誤差因子もしくはノイズと言って、この誤差因子に影響を受けにくい設計するとで製品の信頼性が向上します
通常の設計だと、製品は入力に対し製品仕様に決められたWORKを行い、その結果としての出力を出します
しかし、実際には先ほど述べたような様々な誤差因子が出力に影響します
誤差因子を抑える設計=ロバスト性を高める
辞書等で調べるとロバスト性は
「外乱の影響によって変化することを阻止する内的な仕組み、または性質のこと。頑強性(がんきょうせい)、頑健性(がんけんせい)、堅牢性(けんろうせい)」
のような書き方がされている場合が多いです
それらを参考にした私の理解は
「誤差因子による影響を弱める、もしくは誤差因子の影響を受けても製品の品質を保証できること」
を「ロバスト性」と呼び、若い設計者に説明しています
先ほどのグラフいうと、青線と赤線の幅が小さい製品が「ロバスト性が高い」と言えます
誤差因子を横軸にとったグラフで見てみましょう
図1は誤差因子の影響を受けやすいため、許容できる誤差因子の幅が狭く、逆に図2は誤差因子の許容範囲が広い製品の特長を示しています
例えば、図2のような商品の場合、誤差因子が製造バラツキの場合、製造バラツキが大きくてもお客様が必要とする特性を確保しやすいことになります
仕様環境、例えば温度環境を誤差因子と考えれば、寒い地域暑い地域気にせず使えることになります
つまり、このロバスト性が低い商品でお客様に満足いただこうとしたら、製造に負担をかけバラツキを小さく製造することを要求したり、お客様の使用環境に制限を与える必要が出てくることになります
どうやってロバスト性を高めるか
申し訳ありません、具体的にロバスト性を高める方法を、この記事で語ることは難しいです
製品の特長、特性、求められる仕様が異なりますし、誤差因子の影響をどこまで考えるかにもよります
特定の環境でしか使用しない製品に環境の変化を誤差因子に考える必要なないですね
そうしたらどうするか、
代表的な手法として「品質工学」の手法があります
どの設計要因が誤差要因の影響を受けやすいかを定量的(SN比)に求めることができます
非常に便利です
「品質工学」の手法を使わなない場合でも、常にどの設計要因が性能に影響を与えやすいか、環境や、バラツキに影響を受けやすいかを常に製品の特性として理解するよう経験を積むことも大事だと思います
少なくとも、「誤差因子とロバスト性」この言葉を理解しておいてほしいですね
少し所感
なぜ、こんなことを書こうかと思ったのか少し述べたいと思います
私はTwitterで多くのものづくりにかかわる人をフォローしております
その中で、とことん製品の精度や難しい加工/組み立てにこだわり、技能を磨いている人を見かけることがあります
このことを全く否定するつもりはなく、むしろその職人としての誇りを持った取り組みを尊敬し、日本のものづくりを支えてきたすばらしい考えと思っています
私自身、設計者としてそういう職人さんやものづくりの現場の皆さんに助けられてきました
ただ、設計者として「製造の現場の皆さんの頑張りに甘えていていいのか」という考えをある時からすごく感じるようになりました
ちょうどそのころ「品質工学」の手法を学び、この「ロバスト性」の考え方を知りました
「設計者が誤差因子に強い設計をすれば、ものづくりの現場やお客様に迷惑かけることが少ない製品を作ることができる」
本来の品質工学の本質まで理解できたかは自信ありませんが、私自身は「ロバスト性」の概念を知り、その思いをもって設計することを意識しています
必要以上に公差を狭くしていないか、劣化の影響、環境の影響を常に意識した設計、検証、評価の実施です
これらの許容を常に検証し、すべての後工程の人(工場、流通、お客様)が安心して作れる、流通で売ってもらえる、ユーザーさんが使える商品開発です
結果は同じでも、意識する開発した結果としない場合とでは大きな違いがあると考えています
まとめ
製品の信頼性を向上するために。「ロバスト性」と「誤差因子」の考え方について話させてもらいました
どうしても、ある一点だけの性能で、製品の性能を確保したと考えてしまうのが設計者の弱さです
いろんな誤差要因を考え、その影響を把握しながら設計を進めて、信頼性の高い製品を世に送り出したいですね
具体的方策を提示できず申し訳ないのですが、今回少なくてもこの考え方の基本の部分だけでも理解いただければ嬉しいです
具体的方法を勉強したい方は「品質工学」で検索してみてください(申し訳ないです)
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