【新商品を開発】最初にすることは、お客様に満足いただける性能目標の範囲を決めること

開発

長年、「ものづくり」にかかわり、そのキャリアのスタートは商品設計でした

商品設計の役割について記事を書いています

【新商品開発にかかわる人たちへ】品質を確保するために設計者がするべきこと
品質を新商品開発段階で如何に保証するかで悩んでいる設計者は多いと思います。この記事では新商品開発段階で品質を保証するために設計者がするべき5つのポイントを述べたいと思います

商品を開発する時、開発の途中段階になって、狙いの性能が確保できず「どこまでの性能を達成したら商品出せるやろ」って悩むことありませんか

ひどい部門は悩まず、「こんなこんか」みたいな場合さえありますが・・・

その悩みを減らすために、商品開発の開始段階で

「お客様に価値を認められる商品にするために必要な性能の範囲を明確にしておくことが必要」

と言う話です

新商品の目的

新商品を開発し発売する目的は、いろんな言い方があるかもしれませんが、ここでは

「新しい機能を付け、お客様により満足いただく」

としたいと思います。

従来の商品にはない新機能を付けるために新商品を開発します

その、新機能はその機能が果たす「価値」をお客様に認めてもらわなければなりません

お客様に認めてもらえる価値を見つけるため、商品企画はどのような機能が必要かを探索し、技術者はその機能を達成する技術を開発をしているわけです

新機能の性能を決める

売れる可能性のある=お客様に価値を認めてもらえる商品を企画し、技術を開発することよって、お客様に受け入れてもらえる新機能を見つけ、それを達成する技術ができたとしましょう

「〇〇の商品に〇〇の機能を付け〇〇の性能を達成すれば、その商品をお客様は受け入れ、売れる」

一言で単純に言えばこんな感じでしょうか

ここでお客様は受け入れてくれる性能目標について話します

お客様が受け入れてくれる性能を仮に「100」としましょう

「よし、100の性能を出す新商品を開発するぞ」

と設計者は商品の設計を始めます

しかし、ここでちょっと待ってください

「100」の性能を出せば、お客様は満足してくれる

だったら、99は? 95は?逆に105では?

どこまでの範囲ならお客様は満足してくれるのでしょう?

ここを確認せずに商品化に向かうと後で困ることが発生します

〇困る

モノには必ず「バラツキ」と言うものがあります

100の性能を出そうとしても、98や102になる場合は普通にあります

「98なら2しか変わらんし、ええんちゃう」

確かにそうかもしれません

そしたら95になったらどうですか?

さらに90ではどうでしょう

そのために「性能公差」と言うものを決めてその許容範囲を決めるのが普通ですね

しかし、その公差を決める根拠が必要です

〇困るとき2

商品化には普通、いろんな制限がつきものです

例えば、コスト

性能が良い新しい機能と言っても、お金をいくら掛けても良いわけではありません

形状やサイズ、これもお客様に購入動機を持ってもらうには非常に大事な要素ですね

商品化を進める中で、これらの制約により「100」という性能を出せない場合が出てきます

このような困ったことが商品を開発していると、チョイチョイ発生します

後になって、納期がないからお客様に受け入れもらえるかを確認もせず妥協の性能の商品(例えば90の性能が出るバラツキを持った商品)を発売すると、「全く売れない、売れてもクレームを出してしまう」みたいな問題につながります

性能の許容範囲=品質目標を決める

上記のような問題を起こさないためには、

商品化のスタート段階で「性能の許容範囲」(私はこれを「品質目標」と呼んでいます)

を決めなければなりません

どこまでの性能なら

「お客様が受け入れてくれるのか」

「この商品が提供する価値を出すことができるのか」

を明確にするデータです

難しいことは言っていません

図で示すとこのようなイメージです

新商品の目的にあわせ、お客様に満足いただける性能の受け入れ度を決めます

注1)性能の数値は高ければ高いほど(低ければ低いほど)お客様は受け入れるとは限りません

注2)受け入れ度を数値化するのはかなり難しいですが、ここが各会社のノウハウになります

注3)この受け入れ度と性能の相関が分かっていれば、あとは性能評価でお客様の満足度を把握できることができます

このお客様に満足してもらえる受け入れ度を超える性能の範囲に商品を開発・製造すればいいわけです

上の図で言うと、赤線間の性能になります

赤線間の性能を出せる範囲で、コストや大きさ、デザインを決めて良いわけです

品質目標を決めるときの注意点1

もし、上記に示す赤い線の間=「品質目標」を「性能公差」としてをそのまま設定しても良いわけではありません

「仮に90-110の間はお客様は受け入れてくれる」

だから公差は「100±10」とは限りません

もし、その商品の実力が100±3でバラツキを抑えるのなら、公差は100±3にするべきです

なぜか、

実力が±3にもかかわらず、生産をしている中である時、性能が107になった時、これは明らかに異常です

しかし、100±10の公差にしていたら、これは良品として扱われます

しかし、通常と異なる性能となったのですから何らかの変化点(部品、人、機械、手順等)があったはずで、これはトラブルに通じます

【品質をどのように保証するか:公差の考え方】異常を検出できる公差設定をしよう
商品を開発するときに、仕様書や図面には必ず「公差」が入ります。適切な公差設定をしないと「製品や部品の性能や寸法が公差内に入っているので問題なし」と思っていても、異常の発生を見落とす場合があります。

品質目標を決めるときの注意点2

品質目標は性能だけではありません

その「試験をする条件」も含みます

お客様の使用環境をしっかり把握し、その環境下で満足できる性能でなければなりません

気温や湿度、使用時間・頻度

等の条件をしっかり決めたうえで品質目標を設定してください

これを忘れると、大きなクレームにつながります

まとめ

新商品の開発時に最初に必要な「品質目標」=「性能の許容範囲」の考えたかについて書きました

お客様に満足いただくための商品の性能を明確にし、開発中に「何を目指せばいいのかわからない」みたいな困難に陥っても

開発者にとって最も大切な意識

「お客様視点で開発する」

ことを忘れないために、開発開始時点でしっかりと「品質目標」を明確にしておきましょう

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